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IT導入補助金でパソコンは買える?|上限10万円の現実と2026年の選択肢

「パソコン買い替えたいんですけど、補助金使えますか?」

皆さん、こんにちは。王子かわはし事務所の川橋です。

この相談、本当に多いです。補助金の相談全体の中でもかなりの割合を占めます。

そして毎回、同じ結論になります。パソコンは汎用品なので、ほとんどの補助金で対象外です。

がっかりされる方がほとんどで、それでも「何か方法ないですか」と粘ってくださいます。だからこそ正直に書きます。

まず事実を2つ。

  1. 「IT導入補助金」という名前の制度は2026年度からありません。「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更されました。
  2. パソコン単体では対象外です。 買えなくはないのですが、上限10万円・会計ソフト等とのセットが条件です。

ここから先は、皆さんが本当にやりたいことに合わせた現実的な選択肢の話をします。

まず判断──あなたはA・B・Cどのタイプ?

タイプやりたいこと現実的な選択肢
A純粋にパソコンだけ買い替えたい補助金より自費。節税で実質コストを下げる
B会計ソフトも入れたいし、ついでにPCも古いデジタル化・AI導入補助金(インボイス枠)
C業務全体をIT化・DX化したいデジタル化・AI導入補助金(通常枠)──最大450万円

この記事を読んでいる方の大半はタイプAだと思います。まずそこからお話しします。

【タイプA】パソコンだけ買い替えたい方へ

率直に言います。パソコンの買い替えだけが目的なら、補助金を使うのは全力で止めます。

仮にインボイス枠で申請するとしても、IT導入支援事業者を探して、GビズIDを取得して、交付申請を出して、審査を待って、交付決定が出てからようやく購入という流れです。手続きの大半はベンダーが主導してくれるとはいえ、自分で好きなPCをAmazonで買うわけにはいきません。

そこまでやって、戻ってくるのは最大10万円です。

中小企業だと中古のノートパソコンでも十分なケースは多いです。5万〜8万円で実用的な中古PCは十分手に入ります。その金額のために補助金の手続きに時間を使うのは、正直おすすめしません。

補助金より確実──少額減価償却資産の特例

補助金が使えなくても、節税で実質コストは下げられます。

中小企業なら、30万円未満のパソコンは全額その年の経費にできます(少額減価償却資産の特例)。たとえば25万円のPCを購入すれば、法人税の実効税率を考慮すると実質5〜7万円程度の税負担軽減になります。手続きは通常の経理処理だけ。補助金の申請作業はゼロです。

それでも探すなら──自治体の補助金

国の補助金ではパソコン単体はまず通りません。ただし、自治体独自の補助金なら可能性はあります。

たとえば新宿区では過去に「経営力強化支援事業補助金」という制度があり、ソフトウェア導入とセットでPC1台あたり最大20万円(補助率4/5)の補助実績がありました。国の補助金(上限10万円・補助率1/2)と比べると、条件はかなり良いです。

ただし、こういう自治体独自の制度はある方が珍しいですし、年度によって内容も変わります。相談を受けたらまず「お住まいの区や市の補助金を調べましょう」とご案内するのですが、大抵は見つかりません。ミラサポplusで自治体の支援策を検索できるので、ダメ元で確認してみてください。

【タイプB】会計ソフトもPCも入れたい方へ

会計ソフトや受発注ソフトの導入が本命で、ついでにPCも新しくしたい。そういう方には**インボイス枠(インボイス対応類型)**がちょうどいいです。

補助の条件

  • 対象枠: インボイス枠(インボイス対応類型)のみ。通常枠ではPC購入はできません
  • PC・タブレット: 補助率1/2、上限10万円──20万円のPCで最大10万円戻ります
  • ソフトウェア: 補助率3/4(小規模事業者は4/5)、50万円以下の部分
  • 必須条件: 会計・受発注・決済ソフトのいずれか1つ以上とセット
  • ハードウェアだけの申請は不可

ソフトウェア側の補助率が高いのがポイントです。たとえば会計ソフト年額5万円+PC20万円でセット申請すれば、ソフトに約3.7万円+PCに10万円=合計約13.7万円の補助になる計算です。パソコン単体で申請するよりもはるかにお得です。

やりがちな失敗3つ

  1. Amazonや家電量販店で買ってしまう → 登録済みのIT導入支援事業者からしか買えません。自分で買ったPCは補助対象外です
  2. 交付決定前に買ってしまう → 先に買ったら終わりです。レシートを保存しても無効です
  3. 中古PCやリースで申請する → 対象外です。新品のみになります

この制度のいいところ

ベンダー(IT導入支援事業者)が申請を主導してくれます。ものづくり補助金や持続化補助金のように事業計画書を自分でゼロから書く必要がありません。他の補助金と比べると、申請者の負担は軽い制度です。

会計ソフトの導入を本気で考えていて、ついでにPCも新しくしたい。 そういう方にはちょうどいい使い方です。

【タイプC】本当にやりたいのは「業務のIT化」では?

パソコンの話で検索してこの記事に来た方にこそ知ってほしい話があります。

デジタル化・AI導入補助金の通常枠なら最大450万円(補助率1/2)です。受発注管理、在庫管理、顧客管理、勤怠管理など、業務プロセス全体のIT化が対象になります。

パソコン1台10万円の話と、業務全体を変える450万円の話。どちらが会社にとって意味があるかは、考えるまでもありません。

2026年に「IT導入補助金」から「デジタル化・AI導入補助金」に名前が変わりました。これは制度のメッセージでもあります。人手不足が深刻になる中で、AIやITへの投資はもう「余裕があればやる」話ではなくなってきています。

ただし通常枠には注意点もあります。

  • 通常枠の2025年採択率は約37.9%。事業計画の質が問われます
  • AI機能付きツールが制度上で明確に区分されるようになりました
  • 1法人につき1申請のみ(インボイス枠やセキュリティ対策推進枠との併願は可能です)

申請するなら先にやっておくこと

本気で申請を考えている方は、この3つを先に済ませてください。

  1. GビズIDプライムの取得(オンラインなら最短即日、書類申請で約1週間)→ 取得手順はこちら
  2. SECURITY ACTION宣言(IPAの制度。申請の前提要件です)
  3. IT導入支援事業者の選定公式サイトの検索ツールで、取り扱いツールや「PC販売予定あり」で絞り込めます

1次締切は2026年5月12日です。ただし公募は年に複数回あるので、1次に間に合わなくても諦める必要はありません。2次以降のスケジュールは公式サイトで随時公開されます。

よくある誤解

「ホームページ制作にも使える?」 → Webサイト制作は対象外です。ホームページを作りたいなら持続化補助金のほうがマシですが、過度な期待はしないでください。

「他の補助金と併用できる?」 → 原則不可です。対象経費が完全に重複しない場合のみ例外的に認められることがあります。

「IT導入補助金で検索しても公式サイトが出てこない」 → 2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更されました。ただし公式サイトのURL(it-shien.smrj.go.jp)はそのままです。

まとめ

パソコンを補助金で買いたいというお気持ちはわかります。相談もたくさん受けてきました。

でも、パソコンは汎用品です。補助金で買えるケースはごく限られますし、唯一使えるインボイス枠でも上限10万円。30万円未満のPCなら全額経費にできる税制特例のほうが、手続きゼロで確実です。

会計ソフト等の導入とセットで考えているなら、インボイス枠は使える制度です。それよりも、パソコン1台の話で立ち止まらず、業務全体のIT化に目を向けてほしいと思っています。通常枠なら最大450万円。人手不足とAIの本格普及が同時に来ている今、IT投資の意味はこれまでとは変わってきています。