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旅費規程の作り方|出張手当の金額設定と届出をシンプルに解説

旅費規程、作っていますか?

皆さん、こんにちは。王子かわはし事務所の川橋です。

「出張が増えてきたんだけど、交通費とか日当ってどうしたらいいの?」「旅費規程があると節税になるって聞いたんだけど」——最近、こういう相談がちらほら来ます。

結論から言うと、旅費規程は作ったほうがいいです。従業員がいない1人会社でも、役員だけの会社でも作れます。むしろそういう小さな会社ほど効果が大きい。

理由はシンプルで、出張手当(日当)を出すなら旅費規程がないと非課税にならないから。所得税法9条1項4号で「通常必要と認められる」旅費は非課税と定められていますが、その根拠となる社内規程がなければ、出張手当は単なる給与扱いになって、所得税も社会保険料もかかります。

わたし自身、事務所で旅費規程を作っています。「専門家だから凝った規程を作ったんでしょ」と思われるかもしれませんが、正直に言えば、調べて妥当だと思う金額を書いただけです。旅費規程は中身がシンプルなので、ポイントさえ押さえれば半日で作れます。

旅費規程の基本構成

旅費規程に盛り込む内容は、大きく4つです。

1. 対象者と出張の定義

まず「誰が対象か」と「何をもって出張とするか」を決めます。

  • 対象者: 役員および従業員(パート・アルバイトを含むかどうかも明記)
  • 出張の定義: 片道〇km以上、または〇時間以上の移動を伴う業務、など

出張の定義は会社によってまちまちですが、片道100km以上、あるいは「通常の勤務地を離れて業務を行う場合」とするケースが多いです。曖昧にすると運用で揉めるので、数字で線を引いておくのがコツです。

2. 交通費の精算方法

交通費は実費精算が基本です。領収書を提出してもらって、実際にかかった費用を精算します。

ポイントは乗車クラスのルールです。

区分鉄道航空機
役員グリーン車OKビジネスクラスまで
管理職普通車(片道一定距離以上は指定席)エコノミー
一般社員普通車(自由席または指定席)エコノミー

役員と一般社員で差をつけるのは一般的ですし、税務上も問題ありません。役員はグリーン車を認めている会社は多いです。

3. 日当(出張手当)の金額

旅費規程を作る一番の目的がここです。日当は会社の経費になり、受け取る側は非課税。会社は法人税の節税になり、個人は手取りが増える。双方にメリットがあります。

金額の決め方

「いくらに設定すればいいか」で迷う方が多いですが、考え方はシンプルです。一番コストが高い出張先(たいていは東京)で、実際にどれくらいの食費や雑費がかかるかを基準にすればいい。

参考までに、中小企業で一般的な金額帯を示します。

区分日帰り宿泊
社長・役員4,000〜5,000円10,000〜15,000円
管理職3,000〜4,000円8,000〜11,000円
一般社員2,000〜3,500円6,000〜9,500円

東京出張を基準に考えてみてください。宿泊なら夕食・朝食・昼食で3,000〜4,000円、それに移動中の飲み物やコインランドリー等の雑費が加わります。一般社員でも宿泊で6,000〜9,500円というのは、実費感覚として妥当な水準です。

注意点: 日当の金額に法的な上限はありませんが、世間相場からかけ離れた高額だと、税務調査で「給与」と認定されるリスクがあります。国税庁は「その旅行について通常必要であると認められる費用」と表現しています。上記の相場感に収まっていれば、まず問題になりません。

4. 宿泊費の上限

宿泊費は実費精算でも定額でもどちらでも構いません。

  • 実費精算の場合: 上限金額を決めておく(例:1泊10,000円まで)
  • 定額の場合: 地域ごとに金額を設定する方法もあるが、中小企業ではシンプルに全国一律が運用しやすい
区分宿泊費上限の目安
役員12,000〜15,000円
一般社員8,000〜10,000円

届出は必要?

旅費規程は就業規則の一部(別規程)として位置づけられます。

  • 従業員10人以上の事業場 → 就業規則と一緒に労基署への届出が必要
  • 従業員10人未満 → 届出義務なし。ただし、作成しておくことは強く推奨

届出義務がなくても、旅費規程を書面で作成しておくことが非課税の根拠になります。「口頭のルール」では税務調査で認められない可能性があります。

届出が必要な場合は、就業規則の変更届として労基署に提出します。手順は就業規則の作り方と届出手順で詳しく解説しています。

旅費規程で得られる節税効果

具体的にどれくらいの効果があるか、ざっくり計算してみましょう。

例:月2回の宿泊出張がある社長(1人会社)

  • 日当:15,000円/泊 × 月2回 × 12ヶ月 = 年間360,000円
  • これが全額、会社の経費かつ個人の非課税所得

旅費規程がなければ、同じ金額を社長の給与として支払う場合、所得税・住民税で約30%(所得税率20%前後+住民税10%)がかかります。年間約108,000円の差です。さらに社会保険料(会社負担約15%+本人負担約15%)の削減分を加えると、実質の年間効果は15万〜18万円になります。

10年続ければ150万〜180万円。従業員5人が月1回出張する会社なら、年間の効果はさらに大きくなります。

一度規程を作ってしまえば毎年自動的に効くのがこの仕組みの強みです。作らない月が続くほど、その分だけ損し続けていることになります。

さらに見落とされがちですが、日当は消費税の仕入税額控除の対象にもなります(出張旅費特例)。法人税・所得税だけでなく消費税の節税にもなる点は覚えておいてください。

作るときのコツ

旅費規程はネット上にテンプレートがたくさんあります。それを自社に合わせて修正するのが一番早い。ゼロから書く必要はありません。

修正するときに意識するのは3点だけ。

  1. 金額は「東京出張」を基準にして、法外にならない水準で設定する
  2. 役員と従業員で差をつける(差がないと逆に不自然)
  3. 出張の定義を曖昧にしない(「片道〇km以上」等の数字で線を引く)

旅費規程は作成した日から適用できます。期の途中でも問題ありません。ただし過去の出張に遡って適用することはできないので、思い立ったら早く作るのが得です。

正直、旅費規程は凝ったことを書く文書ではありません。シンプルに作って、ちゃんと運用する。それだけで十分です。

作っただけでは守れない——運用の3つの鉄則

旅費規程は作成がゴールではありません。規程があっても、運用の証拠がなければ税務調査で否認されるリスクがあります。特に1人会社・役員だけの会社は税務署が注目しやすいポイントなので、以下の3点は必ず守ってください。

  1. 出張報告書を残す — 日時・行先・目的を記録する。Excelで十分。「いつ・どこに・何をしに行ったか」が第三者に説明できる状態にしておく
  2. 規程どおりの金額で支給する — 規程に書いた金額と実際の支給額がずれていると、規程の実効性自体を疑われる
  3. 出張の業務目的を明確にする — 1人会社の場合、「本当に業務で行ったのか」が論点になりやすい。取引先との打ち合わせ記録、セミナーの受講証など、出張の実態を裏づける資料を保管しておく

どれも手間のかかる話ではありません。出張のたびに1行メモを残す習慣さえつければ、それが最大の防御策になります。

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