採択結果が出ても、まだお金は使えません
皆さん、こんにちは。王子かわはし事務所の川橋です。
商工会・商工会議所の窓口で補助金の相談を受けていると、「もう使った費用を補助金で精算できますか?」「採択されたら費用を計上できますか」と相談に来ることが珍しくありません。
体感で、窓口に来る方の3割くらいはこの仕組みを正しく理解できていません。
答えは「交付決定を受けるまで費用を計上するのはダメです」。
この記事では、持続化補助金に採択されてから実際に補助金を受け取るまでの流れを、公募要領の言葉をかみ砕いて解説します。
「採択」と「交付決定」は別物です
公募要領(第19回・P.23)にはこう書かれています。
「補助金交付決定通知書」の受領前は、補助対象となる経費支出等はできません。補助金交付決定通知書の前に送付される採択通知書だけでは、補助事業を始めることはできませんのでご注意ください。交付決定日前に行われた発注・契約・支出行為は、補助対象外です。
つまり、こういうことです。
| ステップ | 意味 | できること |
|---|---|---|
| 申請 | 「この計画を審査します」 | まだ何も出来ない |
| 採択 | 「あなたの計画は認められました」 | まだ何もできない |
| 交付決定 | 「この計画に補助金を出します」 | ここから発注・契約・支払いが可能 |
採択は「1次試験合格」のようなもの。交付決定が出て初めて「入学許可」です。
なぜ勘違いするのか
「採択」という言葉が強い。「採択された=決まった=始めていい」と思うのは自然な反応です。でも補助金の世界では、採択と交付決定の間にもう1つの審査(交付申請)があります。
やるべきこと①:見積書を「すぐに」出す
第18回公募から、ルールが変わりました。
採択発表後交付決定までに、経費の価格の妥当性を証明できる見積書等(相見積含む)の提出が必要です。(中略)提出期限までに見積書等の提出がなされていない場合は、採択取消しとします。 ——公募要領 P.23
以前は見積書の提出は実績報告の段階でよかったのが、採択後すぐに出すルールに変わっています。
ここが落とし穴
過去に持続化補助金を使ったことがある事業者ほど危ない。 「前回はこんな手続きなかった」という経験が、かえって足を引っ張ります。
やるべきことは:
- 採択通知を受け取ったら、すぐに見積書の手配を始める
- 相見積もり(2社以上)が必要な場合もある
- 見積書の提出期限を確認する(第19回は2027年5月30日)
やるべきこと②:交付決定まで「何もしない」を徹底する
見積書を出したら、あとは待つしかありません。
交付決定には、採択後、詳細な見積書が速やかに提出された場合でも、採択発表から概ね1〜2か月かかる場合があります。(あくまで目安であり、状況により変動しますのでご注意ください。) ——公募要領 P.23
この待ち時間の間に「先に業者に声をかけておこう」「内金だけ払っておこう」は全部アウトです。発注・契約・支出行為のすべてが交付決定日以降でなければ補助対象になりません。
やってしまいがちなNG行動
| NG行動 | なぜダメか |
|---|---|
| 業者に発注書を送る | 交付決定前の契約行為 |
| 展示会の出展料を振り込む | 交付決定前の支出 |
| 設備の内金を払う | 交付決定前の支出 |
| 工事を始める | 交付決定前の支出行為 |
交付決定日の2日前に工事を始めてしまい、全額補助対象外になったケースもあります。
やるべきこと③:補助金は「後払い」であることを忘れない
もう1つ、意外と知られていないこと。
補助金精算の際には自己負担が必要となり、補助金は後払いです。 ——公募要領 P.2
補助金は「先にもらえるお金」ではありません。自分で全額立て替えて、事業が終わってから精算されます。
つまり、50万円の補助を受ける予定なら、まず自分で100万円(補助率2/3の場合は75万円)を用意する必要があります。
実績報告は意外となんとかなる——ただし証拠書類だけは忘れるな
交付決定が出て、補助事業を実施したら、次は実績報告です。
実績報告の段階では、事務局も比較的丁寧に対応してくれます。書類に不備があっても、訂正・再提出の機会があります。
ただし、証拠書類の原本がないのはどうにもなりません。
実績報告で必要になるもの
- 見積書・発注書・契約書
- 納品書・検収書
- 請求書・領収書(銀行振込の証明)
- 納品前後の写真
- 補助対象物件への「第○回持続化」の表示(シール・マジック等で自作)
特に写真。納品前と納品後の両方が必要です。設備を入れてから「あ、写真撮ってなかった」では手遅れです。
「第○回持続化」の表示は、ものづくり補助金ほど厳しくはない印象ですが、公募要領上は必要ですので覚えておいてください。
本当に忘れがちなのは「1年後の報告」
補助金を受け取ったら終わり——ではありません。
補助事業者は、補助事業終了から1年後の状況について、(中略)「事業効果等状況報告」を、(中略)必ず行うことが必要です。提出していない事業者には補助金申請に際し、制限が課されます。 ——公募要領 P.25
これが「様式第14」。補助事業が終わってから1年間の月別売上高・売上総利益を集計して報告する書類です。
なぜ忘れるのか
- 補助金をもらってから1年以上後に提出期限が来る
- 事務局からの通知はあるが、見落とす人が多い
- 月別の売上データを遡って集めるのに加え、文章での報告も必要。それなりに面倒
実際、この報告を忘れている方はかなり多い印象です。忘れると、次に持続化補助金を申請しようとしたときに制限がかかります。
補助金は「もらって終わり」じゃない
採択から補助金受取までの全体像をまとめます。
採択通知 → 見積書提出 → 交付決定(1〜2ヶ月)→ 補助事業実施
→ 実績報告(事業終了から30日以内)→ 補助金受取(後払い)
→ 1年後:事業効果等状況報告(様式14)
→ 5年間:関係書類の保存義務
採択はスタートラインです。ゴールは遠い。
でも、ルールを知っていれば怖くありません。この記事が「知らなかった」で後悔する人を1人でも減らせたら幸いです。