1. 事業計画書の目的と構成

事業計画書の作成においては、単に数字や取り組む内容を羅列するだけでなく、ビジョンを共有し、関係者全員が同じ方向を向いて進むための指針となることが重要です。しかし、初めて計画策定を行う場合は何をどのようにまとめればよいのか分からず、具体的な方向性が見えにくいという課題もあります。こうした課題の多くは、計画策定の目的や構成を明確に定めていないことに起因しています。

なので、事業計画書の目的と構成をしっかりと把握し、効果的に作成することが重要です。ビジョンやミッションを明確に描き、戦略的な計画を立てることで、投資家や従業員に対して信頼性の高い資料を提供できます。今回は、事業計画書の目的とその基本的な構成について、わかりやすくご紹介いたします。

現代のビジネス環境においては、計画の明確化と共有が成功への鍵となります。各ステークホルダー(取引先、仕入れ先、お客様、金融機関、社員など会社に関係する人)に向けて、一貫性を示して、メンバー全員が一丸となって目標に向かって進むことが求められます。正確な構成を基に事業計画書を作成することで、ビジネスの方向性が明確になり、実行に移す際の混乱を避けることができるでしょう。

事業計画書の目的

  1. ビジョンの共有
    事業計画書は、企業の未来像や目指すゴールを明確にし、全ての関係者に共有するための重要なツールです。これにより、メンバー全員が同じ目的意識を持ち、協力して進むことが可能となります。
  2. 意思決定の拠り所
    市場分析や競合調査を通じて見えてくる課題と機会に対し、どのように対応していくかを具体的に計画します。作った計画書の通りに事業が進むことよりも、状況に応じた意思決定をする判断材料として役に立ちます。
  3. 資金調達のサポート
    投資家や金融機関に対して、事業の将来性や収益モデルを明確に示すことで、必要な資金を調達するための信頼性を高めます。計画書は、事業の可能性を客観的に評価してもらうための重要な資料となります。
  4. 組織内外のコミュニケーション強化
    計画書は、従業員やパートナー、投資家など、様々なステークホルダーとのコミュニケーションを円滑に進めるための基盤です。共通の目標や戦略を共有することで、連携が強化されます。

事業計画書の構成

特に決まりはありませんが、事業計画書は基本的に以下のような基本構成で成り立っています。

・状況の把握

会社を取り巻くお客様やライバルなど、自分では変えることができない外部的な環境及び、自社のセールスポイントやライバルと比較して優れている部分や弱点などの内部的な環境を把握します。状況の把握はより客観的にすることがコツで、なおかつ現在のことか、過去のことか、未来のことなのか時制を意識することにも留意が必要です。

・方向性の決定

把握した状況を踏まえて今後の目標を決めます。目標に正解はないのですが最も重要です。何年後にどういう状態になりたいのかという解像度の高さが計画の迫力につながります。そして目標を達成するための商売の方向性を決めます。商売は売り上げを頂くことになる「お客様」と提供する「商品・サービス」が必要で、自社の長所を活かして誰を相手に商売するか(相手にしないお客様は誰か)を決めていきましょう。

・具体的なオペレーション

方向性が決まったのであれば、実現するオペレーションについて計画します。スケジュールと体制、商品の開発方法や調達方法、販売の計画などを決めていきましょう。あるいは、目標を達成するための課題と原因、対策についてまとめて、いつまでに解決するのかを決めることでオペレーションを進めることができます。

正確に構造化された事業計画書は、企業の成長と成功への地図となり得ます。ここでお伝えする書き方のコツを活用することで、関係者全員が共通の理解を持ち、明確な目標に向けて効率的に活動するための計画書をつくっていきましょう。

この記事を書いた人

川橋 隆則

中小企業診断士 当事務所の代表を務めています

パティシエからスタートして、システムエンジニアとなり、その後に経営コンサルタントとなった
ちょっと変わった経歴の持ち主です。