6. 事業計画の立案②自社の強みを活かそう

新規事業を迅速に軌道に乗せるためには、特に自社の強みを活かした事業の展開を考えていくことが大切です。事業計画の作成に当たっては、現在の強みを整理するとともに、克服すべき弱みなども明らかにしておくとよいでしょう。

とはいえ、わたしも含めて自社(自分)の強みは?と聞かれてスラスラと答えることが出来る人もなかなか少ないものです。そこで、客観的にどのようなモノが強みなのかについてヒントをいくつか提供したいと思います。

パターンから強みを見つける

強みとは、顧客ニーズへの対応を可能にする自社がもつ経営資源や、競合企業よりも優れた特徴的な経営資源のことです。事業を継続してきた企業にとっては継続できた理由が強みになりますし、これから事業を始めようと考えている創業準備をしている方にとっては、これまでに培った、これから始めようと考えている商売で使えそうな武器が強みになります。
以下の項目は、わたしが経営指導の現場でよく遭遇する企業の強みになります。この表から、自社にとって当てはまるかどうかを探してみてはいかがでしょうか。

項目内容
①ブランド力・知名度自社または自社の商品に対する認知度やロイヤルティが高い
②店舗立地(集客力)店前を通行する客の数、商店街の来街客数が多い
③商品開発力商品を企画開発する能力の高い人材や組織がある
④仕入・調達力他社にない商品や原材料を調達する能力やネットワークがある
⑤接客力顧客に対する提案力、相談や質問への対応力がある
⑥プロモーション力Webサイト、イベント、DM、パンフレット等が充実している
⑦顧客データベースいつでも販促に活かせる顧客情報が整備されている
⑧IT技術業務効率化や販促に活かせるIT技術がある

それぞれの説明は次の通りです。

①ブランド力・知名度
自社の商品や屋号が地域や業界内で広く認知され、それが好意的に受け入れられていることは大きな強みとなります。例えば、メンズアパレルブランドとして業界内で高い認知度を持ち、InstagramなどのSNSで多くのフォロワーを獲得している場合や、飲食店がGoogleマップで該当業種を検索すると地域内で上位に表示され、高評価を得ている場合などが挙げられます。これらの状況は、ブランド力と知名度の高さを示し、新規顧客の獲得やリピーターの維持において有利に働く要素と言えるでしょう。

②店舗立地(集客力)
店舗立地は外的要因も含まれますし、ので強みとして考えないというケースもありますが、店舗ビジネスにおいてお客様が集まる立地は強みとして考えることができます。例えば、繁華街や商業施設の近く、交通の便が良い場所に店舗を構えたことで、潜在顧客に対する露出が増え、来店機会が高まります。さらに、周辺環境が魅力的であれば、それ自体が訪問動機となり、リピート客の獲得にも寄与します。このような立地の優位性は、競合他店との差別化にも有効に働きます。

③商品開発力
商売の要は商品です。その商品を企画・開発する能力の高さや、組織としての連携力は大きな武器となります。優れた商品開発力を持つ企業は、常に市場や消費者のニーズを先取りし、革新的で魅力的な商品を提供することができます。
例えば、消費者の変化する嗜好や最新の技術トレンドを迅速にキャッチし、それをもとに新商品を生み出せる力は、競合との差別化に直結します。また、商品開発プロセスにおいて、異なる専門分野の知識を持つメンバーが協力し合うことで、独自の価値を持つ商品を創造することも可能です。

④仕入・調達力
多くの中小企業が持つべき強みとして、仕入・調達力は非常に重要です。他社にない商品や原材料を調達する能力やネットワークを活かすことで、独自性のある商品ラインナップを構築できます。これにより、他では体験できない価値を提供し、価格競争を回避することが可能です。
例えば、希少価値の高い素材や特定地域の特産品を安定的に確保できる仕入れ体制を構築している企業は、競合との差別化を図りやすくなります。また、信頼性の高い取引先との強固な関係性を持つことで、安定供給やコスト面での優位性を維持できるため、品質を保ちつつも競争力のある価格設定が可能になります。
さらに、仕入・調達における柔軟性や迅速な対応力は、市場の変化や突発的な需要にも適切に対応できる強みとなります。新たな仕入先の開拓や既存の調達ルートの最適化を継続的に行うことで、商品開発やサービス提供の幅も広がり、顧客に対して常に新鮮で魅力的な価値を提供できるでしょう。

⑤接客力
この強みも中小企業にとって重要です。お客様に対してヒアリングを行って相談に乗る能力や、その中から何が適切かを判断して提案する事が出きる接客力は大手などのライバルと競争を回避するために持つべき強みです。規模の大きな企業に比べ、顧客と密なコミュニケーションを取りやすい点を活かし、きめ細やかな対応ができるからです。これにより、顧客は安心感を得ると同時に、企業に対する信頼感や親近感を深めることができます。
さらに、接客力の高さはリピート率の向上にも寄与します。顧客一人ひとりに合わせた個別対応を行い、購入後もフォローアップやアフターサービスを丁寧に行うことで、顧客との長期的な関係を築くことができます。このように、優れた接客力は単に商品を売るだけでなく、顧客体験全体を通じてブランド価値を高め、ライバルとの差別化を図り、価格競争に巻き込まれない強みとなります。

⑥プロモーション力
プロモーションとは、販売を促進するための活動です。チラシやパンフレット、Webサイトなどを自社で作ることができるデザイン力やイラストを書くことができる能力、コピーライティングができることは武器となります。プロモーションとは、販売を促進するための活動全般を指します。チラシやパンフレット、Webサイトなどの販促ツールを自社で制作できるデザイン力や、魅力的なイラストを描く能力、心に響くコピーライティングができることは、大きな武器となります。
例えば、ターゲットとなる顧客層に合わせたビジュアルやメッセージを効果的に発信できる企業は、ブランドの認知度を高め、購買意欲を刺激することが可能です。最新のデジタルマーケティング手法を取り入れ、SNSやメールマーケティングを活用して迅速かつ効果的に情報を発信する力も、競争優位を築くために重要です。
さらに、社内に優れたクリエイティブ人材を確保し、自社メディアを自在に操ることで、コストを抑えながらも高品質なプロモーション活動が実現できます。これにより、限られた予算の中でも効果的な広告展開が可能になり、消費者に対して強い印象を残すことができます。

⑦顧客データベース
お客様との関係性を深めるための情報が蓄積されていることも大きな強みになります。飲食店でのポイントカードや会員登録情報、販売履歴情報などが該当します。これらのデータを活用することで、顧客の嗜好や購入履歴、来店頻度などを詳細に分析し、個別に合わせたサービスや商品提案が可能となります。ちゃんと管理出来ていることは素晴らしい武器になります。
例えば、定期的に来店するお客様に対しては、特別なキャンペーンや誕生日特典を提供することで、顧客満足度を高め、ロイヤルティを強化できます。また、過去の購入履歴をもとに、顧客が興味を持ちそうな新商品の情報をタイムリーに提供することで、販売機会を拡大することも可能です。

IT技術
業務効率化や販促に活かせるIT技術を保有していることも大きな強みとなります。最新のソフトウェアやクラウドサービス、データ分析ツールなどを導入することで、業務プロセスを自動化・最適化し、コストを削減して有効な業務に集中させることが可能です。たとえば、POSシステムや在庫管理システムを活用してリアルタイムで売上や在庫状況を把握し、迅速な意思決定や需給調整を行うことができます。また、顧客データ分析を通じて商品の改廃を検討したり、Webサイトやモバイルアプリを活用してオンライン販売や顧客コミュニケーションを強化したりすることも可能です。

弱みの考え方について

弱みとは、顧客ニーズに応えるために必要な経営資源でありながら自社が欠けている部分や、競合他社に比べて劣る資源を指します。これは強みの逆の視点から捉えることができます。つまり、自社が経営目標を達成するために持つべき、または持っていると望ましい強みが不足している状態が弱みとなります。

ただし、ここで言う弱みは単なる問題点全般ではありません。経営目標の達成に直接関わる不足する資源や改善が必要な点に限定されます。目標達成に無関係な問題や課題は、重要な弱みとして扱うべきではありません。経営目標に直結する範囲で、自社の不足や改善すべき点を特定することが、弱みを正しく捉えるために重要です。

この記事を書いた人

川橋 隆則

中小企業診断士 当事務所の代表を務めています

パティシエからスタートして、システムエンジニアとなり、その後に経営コンサルタントとなった
ちょっと変わった経歴の持ち主です。