新事業進出補助金は、正式名称を「中小企業新事業進出促進補助金」といいます。中小企業が既存事業とは異なる新たな分野へ挑戦する際、その設備投資等の経費を国が補助する制度です。中小企業庁が所管し、中小企業基盤整備機構(中小機構)が事務局を務めています。
この制度は、2024年度まで実施されていた事業再構築補助金の後継にあたります。事業再構築補助金にあった「売上減少要件」が撤廃され、コロナの影響に関係なく、新分野への進出を計画している中小企業であれば申請できるようになりました。
第3回公募の申請締切は2026年3月26日です。この記事では、制度の仕組みから申請の流れ、採択に近づくためのポイントまでを解説します。
補助上限額と補助率
補助率は一律1/2です。補助下限額は750万円のため、最低でも税別1,500万円以上の設備投資が前提となります。補助上限額は従業員規模に応じて以下のとおりです。
| 従業員規模 | 補助上限額 | 大幅賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 20人以下 | 2,500万円 | 3,000万円 |
| 21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 |
| 51〜100人 | 5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
大幅賃上げ特例は、基本要件を超える水準で賃上げに取り組む事業者に適用されます。
採択率|第1回は37.2%
新事業進出補助金は2025年に創設された新しい制度です。採択実績はまだ限られています。
| 回 | 応募件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|---|
| 第1回 | 3,006件 | 1,118件 | 37.2% |
| 第2回 | — | — | 未発表(2026年3月時点) |
約3件に1件が通る水準で、事業再構築補助金の後期と同程度の厳しさです。制度が定着するにつれて応募件数が増え、採択率がさらに下がる可能性もあります。計画書の質で差がつく制度です。
当事務所(王子かわはし事務所)は、前身にあたる事業再構築補助金で8件の支援のうち6件が採択(採択率75%)という実績があります。新事業進出補助金は制度の骨格を引き継いでおり、審査で問われる「新規性」「市場性」「実現可能性」の考え方は共通しています。事業再構築補助金で培った知見は、この制度でもそのまま活かせると考えています。
対象者の要件
新事業進出補助金の対象者は、日本国内に事業所を持つ中小企業者等です。業種ごとに資本金と従業員数の基準が定められています。
| 業種 | 資本金 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業等 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
いずれも資本金または従業員数のどちらかを満たせば対象です。
個人事業主も申請可能です。ただし、補助下限額が750万円であるため、ある程度の規模の投資を伴う事業計画が必要になります。
また、一般事業主行動計画の策定・届出・公表が申請要件に含まれています。この手続きには2週間以上かかるため、早めに準備してください。
基本要件|新事業進出・賃上げ・付加価値額
新事業進出補助金には、他の補助金にはない独自の要件があります。特に「新事業進出要件」は、この制度の根幹をなすものです。
| 要件 | 基準 | 備考 |
|---|---|---|
| 新事業進出要件 | 新製品・サービスを新規顧客層に提供 | 新事業の売上が全体の10%以上の見込みが必要 |
| 付加価値額 | 年平均4.0%以上の増加 | 3〜5年の事業計画で達成見込みを示す。ものづくり補助金(3.0%)より高い水準 |
| 賃上げ要件 | ①給与の年平均成長率≧最低賃金上昇率、または②給与支給総額の年平均成長率≧2.5% | いずれか一方を満たす。返還義務あり |
| 事業場内最低賃金 | 地域別最低賃金+30円以上 | 返還義務あり |
既存製品の単純な増産や、既存市場への追加投資は対象外です。賃上げ要件と事業場内最低賃金の要件には返還義務があり、補助事業終了後に要件を満たしていない場合、補助金の一部または全部の返還を求められます。計画段階で実現可能かどうかを慎重に判断してください。
補助対象になる経費
補助対象として認められる経費は以下のとおりです。申請にあたっては、建物費または機械装置・システム構築費のいずれかを必ず含める必要があります。
| 経費区分 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 建物費 | 新事業に必要な建物の建設・改修(新築・増築・改築・改修) | いずれか必須 |
| 機械装置・システム構築費 | 機械・装置の購入、システムの開発・構築 | いずれか必須 |
| 技術導入費 | 知的財産権の導入に要する経費 | — |
| 専門家経費 | 事業遂行に必要な専門家への謝金・旅費 | 上限100万円 |
| 運搬費 | 運搬・宅配・郵送にかかる費用 | — |
| クラウドサービス利用費 | クラウドコンピューティングの利用料 | — |
| 外注費 | 自社で対応できない業務の外部委託費用 | 補助金総額の10%が上限 |
| 知的財産権等関連経費 | 特許権等の取得に要する弁理士費用など | — |
| 広告宣伝・販売促進費 | 新事業に関する広告・プロモーション費用 | 新事業の売上見込みの5%が上限 |
なお、事業再構築補助金では対象だった研修費や廃業費は、この制度では対象外です。
第3回公募のスケジュールと申請の流れ
第3回公募のスケジュールは以下のとおりです。
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募開始 | 2025年12月23日 |
| 応募受付開始 | 2026年2月17日 |
| 申請締切 | 2026年3月26日 18時(厳守) |
| 採択発表 | 2026年7月頃(見込み) |
| 実施期間 | 交付決定日から14か月以内 |
採択後に交付決定を受けてから補助事業を実施し、実績報告と検査を経て補助金が入金されます。第4回公募は2026年3月末に開始される予定です。第3回に間に合わない場合は、第4回での申請を検討してください。
申請方法
申請は電子申請のみです。郵送での申請は受け付けていません。事業計画書はWeb上の入力フォームに直接データを入力する方式です。
申請にはGビズIDプライムのアカウントが必要です。GビズIDの取得には2〜3週間かかるため、まだ取得していない場合は今すぐ手続きを始めてください。
採択される事業計画書のポイント
新事業進出補助金の審査では、新規性・市場性・実現可能性・公的補助の必要性が評価されます。
新規性 では、自社にとって新しい取り組みであり、既存製品・サービスの単純な延長ではないことを示す必要があります。容易に製造できる製品や、既存製品の組み合わせにすぎないものは減点対象です。差別化要素や独自技術を明確に説明してください。
市場性 では、新事業のターゲット顧客と市場規模を具体的に示します。新事業の売上が全体の10%以上を占める見込みであることも、根拠を添えて説明する必要があります。
実現可能性 では、実行体制・リスク対策・資金調達計画を明確にします。「誰が・いつ・何を・どのように実行するか」を具体的に記載してください。
公的補助の必要性 では、地域雇用の創出や下請企業の活性化など、社会的な波及効果を説明します。
第3回公募から口頭審査が厳格化されました。申請事業者本人が対応することが必須で、外部支援者の同席や代行は認められません。計画の内容を自分の言葉で説明できるよう、十分に準備してください。
加点項目
審査で加点される主な項目は以下のとおりです。申請締切までに認定・登録を取得しておく必要があります。
| 加点項目 | 内容 |
|---|---|
| パートナーシップ構築宣言 | サプライチェーン全体での取引適正化に向けた宣言を公表。オンラインで比較的短期間に登録可能 |
| くるみん認定 | 子育て支援に積極的に取り組んでいる企業が対象 |
| えるぼし認定 | 女性活躍推進に取り組んでいる企業が対象 |
| 健康経営優良法人認定 | 従業員の健康管理を経営的な視点で実践している企業が対象 |
| 技術情報管理認証 | 技術情報の管理体制が認証基準を満たしている企業が対象 |
| アトツギ甲子園 | 中小企業庁主催のピッチイベントへの出場経験がある事業者が対象 |
取得できるものを一つでも多く押さえておくことで、採択の可能性が上がります。
計画書づくりに迷ったら|王子かわはし事務所の伴走支援
「新しい事業に挑戦したいけれど、計画書にどう落とし込めばいいか分からない」。そうした方は少なくありません。
王子かわはし事務所では、中小企業診断士が事業計画の策定段階から伴走支援を行っています。
新事業進出補助金は、事業再構築補助金の後継制度として要件が整理された一方、「新規性」の審査が厳格になっています。口頭審査への対策も含め、申請者自身が計画を深く理解できるよう支援します。
申請書類の作成だけでなく、採択後の補助事業の実行、実績報告まで一貫してサポートできるのが、当事務所の強みです。
支援の流れはシンプルです。まず初回相談(60分・5,000円)で、補助金の活用が可能かどうかを判断します。活用できる見込みがあれば、事業のヒアリングと事業計画の策定支援に進みます。着手金は5万円(初回相談料を充当するため実質4.5万円)で、計画書を仕上げて提出するところまでサポートします。採択された場合のみ成功報酬が発生し、不採択の場合は成功報酬はかかりません。
ご相談は電話(050-6869-1215・平日9:00〜18:00)、LINE、またはお問い合わせフォームから受け付けています。
よくある質問
Q. 事業再構築補助金との違いは何ですか?
新事業進出補助金は事業再構築補助金の後継制度です。大きな違いは3点あります。1つ目は、売上減少要件が撤廃されたことです。コロナの影響に関係なく申請できます。2つ目は、補助下限額が750万円に引き上げられたことです。小規模な投資は対象外になりました。3つ目は、研修費や廃業費が対象経費から外れたことです。付加価値額の成長率要件も年平均4.0%以上と、事業再構築補助金の一部類型より高く設定されています。
Q. 個人事業主でも申請できますか?
申請できます。ただし、補助下限額が750万円のため、最低でも税別1,500万円以上の設備投資が必要です。小規模な投資を検討している場合は、ものづくり補助金や持続化補助金のほうが適している場合があります。
Q. 既存事業の拡大でも申請できますか?
既存製品の単純な増産や、既存市場への追加投資は対象外です。この補助金は「新たな製品・サービスを新規の顧客層に提供する」ことが要件です。既存事業の延長ではなく、自社にとって新しい分野への挑戦であることを示す必要があります。
Q. 口頭審査ではどんなことを聞かれますか?
事業計画の内容について、申請者本人が直接説明を求められます。新事業の具体的な内容、市場の見通し、実施体制、収益計画などが主な質問対象です。第3回公募から外部支援者の同席・代行が不可となりました。事業者自身が計画を十分に理解していることが求められます。支援者と一緒に計画を作り上げる過程で、内容を自分のものにしておくことが大切です。
Q. 採択率を上げるためにできることはありますか?
加点項目の取得が有効です。パートナーシップ構築宣言はオンラインで比較的短期間に登録できるため、まだの場合は早めに対応してください。くるみん認定やえるぼし認定、健康経営優良法人認定なども加点対象です。加えて、事業計画書の完成度が採否を分けます。新規性・市場性・実現可能性を具体的な根拠とともに示すことが採択の鍵です。
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